コラム

2013-07-30

夏に涼しい断熱材-2

前回の続きで、木質繊維断熱材について書かせていただきます。

断熱性を上げてゆけば、冬寒くないようにするのは、実はそれほど難しい技術ではありません。
断熱材の性能は、熱伝導率という数値で表され、この熱伝導率が高い断熱材を、厚く施工してあげればいい、
となっていましたが、実は、話はそれほど単純ではございません。

近年、熱伝導率と同時に、いや、むしろそれ以上に、断熱材の密度・熱容量というものが大事、
ということが研究で分かっています。
ちょっと小難しいお話ですが、ご紹介させていただきます。


【木質繊維断熱材と高性能グラスウールの比較実験】

熱伝導率がほぼ同じの、高性能グラスウールと、昨日ご紹介した木質繊維断熱材の、熱の伝わり方の違いを実験してみました。

まず始めに、熱の伝わり方には、
伝導(熱エネルギーそのものの伝わり)
対流(物質の移動による熱の伝わり)
放射(電磁波による伝わり)
の三種類があり、さらに、周囲の温度や、実験箱そのものの素材の温度や熱伝導率などなど、実はとっても複雑で難しいので、この結果が全てというのではなく、また、実際の建物において、そのままこの結果がきれいに反映するわけではない点は、前置きとさせていただきます。



今回使用した実験箱です。
断熱材の中心部(電球からは垂直方向)がメインで、それに、
・電球直下(断熱材の深さは、表面から2cmほど。)
・断熱材のほぼ裏側(つまり底部。熱源を表とすると、表面から11cmほど。)
・電球から離れた外側(深さは中心部と同じ。)
の三箇所を加え、それぞれ4箇所、合計8箇所での測定です。

高性能グラスウール(24kg/m3・12cm厚、熱伝導率0.036)と、
木質繊維断熱材(60kg/m3・12cm厚、熱伝導率0.039)。
熱伝導率が同じ(むしろグラスウールの方が良い)で、熱の伝わり方がどう違うのか…?

早速結果と考察です。



まずは、高性能グラスウールの結果です。

200ワットの電球が実験箱のサイズにしては強烈すぎ、電球直下の温度計(赤線)は、点灯後5分程度で測定限界の100℃を越えたため、壊れない様に抜いてしまいました。
この電球直下部分(赤)は、25分後の消灯後、5分経って(つまり、実験開始から30分後)から再度測定開始しました。
(なので、線が切れています。値も測定再開直後は不正確だと思います)

グラフが小さくて数字が見にくいですが、緑が中心部。
消灯後数分でピークを迎え、冷めて行くのが分かります。

外周部(青)、底部(紫)になるほど、温度の上昇が緩やかなので、断熱材は、電球の熱が伝わりづらいことが分かります。
(当たり前の結果ですが)

次に、木質繊維断熱材の結果。



電球の条件は同じです。
触れば大やけど必至の強烈な熱源。
実際電灯直下の断熱材表面から2cm付近では、高性能グラスウールの方は開始5分で測定不能になったのに対し、木質繊維断熱材は、この表層部も、25分間を余裕でクリア。
最高温度は45℃でした。

電球直下以外の測定ポイントでは、実験開始直後、点灯中(グラフの背景がオレンジ)にもかかわらず、いったん温度が下がって、しばらくの間その温度で安定しているのが分かります。
これは、実験をしたのが冬だったためです。
実験時の外気温は約7℃。
当然夜間はもっと寒かったので、断熱材自体の温度が冷えて(つまり蓄冷されている状態)いるためだと思われます。

線が沢山なので、部位を絞って二つの断熱材を比較します。



これは、二つの断熱材の中心部の温度変化の違いです。
注目すべきは、やはり断熱材の温度のピークを迎える時間の違い(ずれ)。
高性能グラスウールが、消灯後3分付近だったのに対し、木質繊維断熱材は、消灯の25分後にピークを迎えてから冷め始めます。

日本の断熱材の評価指針である熱伝導率は、高性能グラスウールの方が高性能な値なのに、この結果は、明らかに木質繊維断熱材の方が、熱の伝わり方も遅く、熱の伝わる量も少ない、のが見てとれます。

最後にこちら。



二つの断熱材の、表層から反対側への、熱の伝わり方の違いです。
表面から2cmほどの位置から、表面から11cmほどの、熱源の反対側までの伝わり方を、測定ポイントの温度のピークで結んで(矢印で繋ぐ)比較しました。

高性能グラスウールは、測定再開まで空白時間がありますが、消灯後直ぐに冷え始めるので、消灯直後がピークと判断出来ます。
高性能グラスウールの底部の温度ピークは実験開始後35分近辺ですから、この実験では、約10分間、温度ピークがずれていることが分かりました。

木質繊維断熱材では、表層のピークが消灯後約1分、底部のピークが消灯後30分で、温度ピークのずれは、高性能グラスウールの3倍の、約30分。
このピーク時間のずれは、熱の伝わり方の早さと強い相関関係があると言って良いと思います。
これら結果は、密度の違い、つまり熱容量の違いです。

熱を伝えにくければ、夏に降り注ぐ熱を室内に伝えにくく、冬の暖かさを逃がしにくい。
しかも木で出来ているから調湿性が高いです。
なかなか理想的な断熱材だと思いす。


もちろん、この結果を持って、これが最高、他は全部ダメ、などという極論を言うつもりは毛頭ありません。
その特性・メリットとデメリット・費用対効果などから、時分に合ったものを探すというのが正解だと思いますし、その一助になれば幸いです。


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