コラム

 公開日: 2015-06-02 

相続相談事案から

昨年度、相続時精算課税制度を使った贈与の申告を行ったのですが、今年になり親がお亡くなりになり相続が発生した方からの相談で、税法特有の問題が生じるケースがありましたのでご紹介します。

相談者から各種相続資料をお預かりし、持って来て頂いた資料から財産総額をザックリと計算したところ、この事案では相続税の納付義務が生じることは無いと判断できました。

しかし、お亡くなりになった親が生前に遺言書を公正役場において作成してあったことが判り、遺言書を拝見させていただいたところ、全ての財産を1人の相続人に相続させる旨の記載があったのです。

遺言書を他の相続人に見せたところ、相続人の1人が自らの「遺留分」を主張し始めたので、「調停」や「審判」と呼ばれる裁判所を介しての争いにまで発展する虞が出てきたのです。

最終的には、調停の申し立てをすることなく話し合いが出来、全財産を取得した方が遺留分相当額を1人の相続人に支払うことで決着がついたとの連絡を受けたのです。

民事の問題はこれで解決できたのですが、税務上の問題が提起されることになりますので、皆さんも注意して下さい。

遺留分の受け取りに贈与税?

遺言や遺産分割協議によって遺産の分割が既に成立しているものについて、その全部または一部を全員の合意によって解除して、改めて遺留分を考慮した遺産分割協議を成立させることは、最高裁判所の判決でも認めています。

つまり、民事上は問題ないのですが、相続税の通達19の2-8の中に次のような文章があるのです。

「当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならないのであるから留意する。(昭47直資2-130追加、昭50直資2-257、平6課資2-114改正)」

一度読んだだけでは理解できないような文章ですが、要は「遺産分割のやり直しによって取得した場合には、相続によって取得したものにはならない」と言っているのです。

相続による取得でなければ、譲渡や交換或いは贈与等のいずれかによって取得することになります。

例えば、AさんからBさんに土地を遺留分として渡すので土地の所有権登記をやり直した場合には、無償でAさんからBさんに土地を贈与したものとして税務上は考えるのです。

これにより、Bさんは贈与税の支払い義務が生じてしまうのです。

相続によって取得した財産であれば相続税が課税されるのですが、同じ相続でも一度分割が決まったものをやり直すということは、このようなリスクが待ち構えているということを覚えておいて下さい。

今回の相談事案では、「当初の遺言書をご破算にして、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺言書とは異なった遺留分を加味した遺産分割をすることも出来ますがどうですか?」と確認したところ、行方が分からない相続人が居るので遺産分割協議そのものが出来ないという回答が返ってきました。

そうであるならば、遺言書通りに相続財産を承継してもらった上で、遺留分を渡して贈与税を支払ってもらうしか手はありません。

民法は一般常識で通用するのですが、税法には一般常識が通用しないという一例でもあります。

--------------------------------------------
   増田哲士税理士事務所
   〒439-0006 菊川市堀之内453-3
        TEL 0537-35-2772
  オフィシャルホームページ
  相続専門Facebookページ
--------------------------------------------

この記事を書いたプロ

増田哲士税理士事務所 [ホームページ]

税理士 増田哲士

静岡県菊川市堀之内453-3 [地図]
TEL:0537-35-2772

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
セミナー・イベント
相続の広場

第二次大戦後に日本国憲法が改正されたのに伴い、民法が改正される以前には遺言という制度が法律上はありませんでしたが、前回説明したとおり日本に遺言という慣習が無...

 
このプロの紹介記事
増田哲士税理士事務所・増田哲士さん

経営に関する「お金の予防法」で企業存続を支える(1/3)

 先代の創業以来40年近く、静岡県菊川市を中心に中東遠地域の税務業務を手掛ける増田哲士税理士事務所。その代表を務める増田哲士さんは、税理士の使命として「企業経営の支援に必要なのは、節税対策よりも事業を永続的なものにするための対策です」とおっ...

増田哲士プロに相談してみよう!

静岡新聞社 マイベストプロ

次世代に思いを繋げる為の税金に捉われない多角的提案

会社名 : 増田哲士税理士事務所
住所 : 静岡県菊川市堀之内453-3 [地図]
TEL : 0537-35-2772

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

0537-35-2772

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

増田哲士(ますだてつし)

増田哲士税理士事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
養子縁組に関する相続税節税対策の注意点

当事務所に寄せられた相続に関する相談の一つをご紹介いたします。その相談は、「養子縁組を考えているのです...

[ 相続 対策 ]

生前贈与(暦年贈与の仕組み)
イメージ

贈与税とは、暦年課税方式或いは相続時精算課税方式により、1月1日から12月31日までの1年間に財産を受け取った人...

[ 相続 贈与 ]

アパート経営による節税対策の注意点

ご自宅以外に土地を所有している方で、「アパート経営すれば相続税対策になりますよ!」という決まり文句で、ディ...

[ 相続 対策 ]

土地の評価はどうするの?

税務署から届いた「相続税の申告等についてのご案内」という文書が入った封筒の中の、「相続税の申告のためのチェ...

[ 相続 土地 ]

税務署から相続税の申告についての案内文書が届いた!?

「父親が亡くなって五か月ほど経った頃に、税務署から「相続税の申告等についてのご案内」という文書が入った封筒...

[ 相続税 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ