コラム

 公開日: 2018-05-03 

未払残業代に係る法人税及び所得税の取り扱い

 社会的に問題となっている違法な長時間労働の解消に向けた取り組みとして、現在、労働基準監督署は長時間労働が疑われる事業者に対して調査や監督指導を行っています。また、厚生労働省は、労働基準法違反で送検された企業の企業名等をHPで公表するなど取組を一層強化しているところです。

 ところで、企業が過年分の未払い残業代を従業員等に対して一括支給した場合、所得税は、一時金(清算金等)として支払われたときは当年分の給与、過去の実働労働時間に基づき過去の給与として支払われたときは過年分の給与として取り扱われます。法人税については、一時金か過年分の給与であるかに関係なく当期の費用として損金算入されることを改めて確認しました。

■労働省 労働基準局法違反企業をHPで公開

 労働基準監督署は現在、1か月あたり80時間を超える時間外・休日労働が行われた疑いのある事業場や、長時間労働による過労死などに関する労災請求があった事業場を対象に調査や監督指導を行っています。
 平成29年7月26日付の公表資料によると、平成28年4月から平成29年3月までに23,915事業場に監督指導を実施。うち、10,272事業場で違法な時間外労働を確認しました。賃金不払残業があったものは1,478事業場でした。
 また、厚生労働省では、労働基準関係法令違反を行った企業の企業名や所在地、事案概要等をホームページに掲載。平成29年7月14日時点で393社が公表されています。(厚労省「藤堂基準関係法令違反に係る公表事案」)。今後も、長時間労働等の是正に向けた取組を積極的に行っていく方針です。

■所得税は支給形態により取り扱いが異なる

 企業が、未払いであった過年分の残業代について“一時金(清算金等)”として支給した場合、その課税年分は「支給日が定められているものについてはその支給日、支給日が定められていないものについてはその改定の効力が生じた日」となります。
 つまり、賞与を支給した場合と同様に、当期に支給することが確定した給与等に該当します。そのため、過年分の所得税額や住民税額について修正する必要がありません。しかし、従業員等においては、支給を受けた年分の給与が増大することから所得税やその翌年度分の住民税に影響します。
 一方、実労働時間に基づき“過年分の給与”として支給した場合、「本体支給すべきであった支給日の属するそれぞれの年分の給与所得」となります(参考:国税庁タックスアンサー「NO.2509 給与所得の収入金額の収入すべき時期 Q&A」)
 この場合、源泉徴収義務者は、残業代を支給した時点で過年分の年末調整計算をやり直し、納付不足となっていた税額を支給した時の翌月10日までに納付する必要があります。また、源泉徴収票の出し直しに加えて特別徴収義務者として給与支払い報告書を訂正して各自治体に再提出しなければなりません。

■法人税法上は残業代の支払時に損金算入

 法人税の取り扱いは、残業代の支給形態に関係なく支給した期の費用として損金算入されます。(残業代は、過去の労働に起因するものですが、支給額の決定が当期であることからすると当期に債務が確定しているといえるため。)。
 また、申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと、又は計算に誤りがあったことにより、申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときは、更正の請求の対象となるとしていますが、過年分の残業代の未払いはこれらのいずれにも該当しません。そのため、更正の請求の対象となる余地もありません。

■社会保険料の過不足は賞与と同様の処理が一般的

 ちなみに、残業代の未払いにより過年分の社会保険料に過不足があった場合はこちらの修正も必要になります。
 一般的に、未払い残業代を一括で支給した場合、賞与を支給した場合と同様に処理することが多いようです。
 賞与と同様の処理であれば事業者の事務負担にはならない点に加え、保険料の納付には「2年」の時効があり、3年以上前の期間に係る保険料は納められない仕組みとなっています。3年以上前の期間に係る保険料が過不足であると将来受け取る年金額に影響があります。

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